3. コミュニティ辞書作成について

コミュニティ辞書の作成方法について説明します。


3.1 はじめに

ここでは「訳してねっと」における英語の基本文法と品詞定義について説明します。 より効果的なコミュニティ辞書の登録のために、ご一読ください。 なお、本内容は、将来、ユーザの要望などを参考にし、登録できる品詞や用法を追加、修正していく予定です。
以下の説明は、今後、変更される可能性があることをご承知おきください。


3.1.1 英文の基本構造

英文の基本文型は、次の5文型に大別されます。「訳してねっと」においてもこの5文型を基に文が解析されます。
(Sは主語、Vは主動詞、Oは目的語、Cは補語)

S主語やO目的語は、名詞を中心とした句により形成されます。 C補語は、名詞と形容詞のいずれか一方を中心とした句により形成されます。 V主動詞は、動詞を中心とした句により形成されます。 文の構造をさらに細かく見た場合、名詞は形容詞によって修飾され、動詞は副詞によって修飾されます。 また、「訳してねっと」では、一文まるごとを示す品詞を「」とします。 現時点での「訳してねっと」では、上記の、名詞、形容詞、動詞、副詞、文の5品詞について登録することができます。


3.1.2 各品詞の標準形および変化形・活用形について

英語の名詞、動詞、形容詞、副詞は、文内での使われ方により、語尾が変化します。 例えば、名詞の単数形の見出しにsがつくと複数形になったり、動詞の原形の見出しにedがついた場合は過去形や過去分詞になるという現象です。 この変化した見出しを変化形と呼びます。一方、通常辞書に登録されている変化する前の見出しのことを標準形と呼びます。 各品詞がどのような、変化形をとるかは、1.3 各品詞の働きで説明します 。

例: 標準形 workstation 変化形 workstations
think thinks, thought, thinking
great greater, greatest

日本語の動詞、形容詞も、文内での使われ方により、語尾が変化します。例えば、動詞の後ろに名詞がくると連体形になったり、「。」で終わると、終止形になったりする現象です。この変化した見出しを活用形と呼びます。
一方、通常辞書に登録されている変化する前の見出しのことを標準形と呼びます。

例: 標準形 働く 活用形 ない、働ます、働
効果的だ 効果的、効果的
最高だ 最高、最高

3.1.3 各品詞の働き

5品詞(名詞、動詞、形容詞、副詞、文)の働きについて説明します。 (実際の登録については、「2.各品詞におけるユーザ登録方法について」を参照してください。) なお、説明をわかりやすくするために、全ての説明に例を設けています。 赤字になっている部分が、その品詞の見出し及び訳語です。
例えば、 a. 名詞 において、

例: Bill Smith established the standard for industry.

の例があった場合、名詞に相当する部分は、 "Bill Smith" と "standard for industy" です。

a. 名詞

文の構成要素の中で、S主語、O目的語(例1)またC補語(例2)になることができます。 単独で文を形成することもできます(例3)。
単数形、複数形の変化形をとります。(例えばpenは単数形でpensが複数形です。)

例1: Bill Smith established the standard for industry.
ビル・スミス会社法規を制定した。
例2: It is Boolean.
それは論理型です
例3: User's Guide
ユーザガイド

b. 動詞

文の構成要素の中で、V主動詞になることができます。 原形、3人称単数現在形、過去形、現在分詞形、過去分詞形の変化形をとります。 (例えば、giveが原形、givesが3人称単数現在形、gaveが過去形、givingが現在分詞形、givenが過去分詞形です。)現在形(例1)、過去形(例2)の動詞は、主動詞となることができます。 原形、現在分詞、過去分詞の動詞(例3)は、beやhaveの補助動詞やcanなどの助動詞を伴 うことで 主動詞となります。 現在分詞や過去分詞の動詞(例4)は、名詞を修飾する場合もあります。

例1: Stars shine.
星は輝く
例2: Bill Smith established the standard for industry.  
ビル・スミスは会社法規を制定した。
例3: The standard for industry was established by Bill Smith.
会社法規はビル・スミスによって制定された。
例4: A shining star
輝いている星

c. 形容詞

名詞を前後から修飾したり(例1、例2)、be動詞等の補語(例3)になったりします。 原級、比較級、最上級の変化形をとります。 (例えば、hotが原級、hotterが比較級、hottestが最上級です。)

例1: The student absent from school
学校を休む学生
例2: A young boy
若い少年
例3: He is young.
彼は若い

d. 副詞

形容詞や動詞を修飾します(例1、例2)。前置詞句(前置詞+名詞句)も副詞となります(例3)。 原級、比較級、最上級の変化形をとります。 例えば、fastが原級、fasterが比較級、fastestが最上級です。

例1: He is extremely young.
彼は大変若い。
例2: Stars shine brilliantly.
星はキラキラ輝く。
例3: Bill waited for a long time.
ビルは長い間待った。

e. 文

文として成り立つ表現は、全て文に含まれます。主語、動詞が揃っている表現(例1)だけでなく 挨拶などの表現(例2)や、タイトルなどの名詞句(例3)も含まれます。

例1: Stars shine brilliantly.
星はキラキラ輝く。
例2: hello, there.
やあ、こんにちは。
例3: travel
旅行

3.2 各品詞のコミュニティ辞書登録方法について

3.2.1 全品詞共通

全品詞に共通するコミュニティ登録の際の注意点を以下に記します。

3.2.2 名詞

英語見出しに名詞の見出しを登録し、日本語見出しに名詞の訳語を登録します。 英語見出しの標準形は、通常、単数形です。(複数形しかない場合は複数形です。) 日本語見出しの標準形は、日本語名詞は活用しないため、訳語そのものです。

イディオムの場合、変化の対象となる語(変化形によって変化する語)は見出しの最後尾の単語です。 (以下の例では、star, Edison, communicationsが変化の対象となりますが、自動変化形推定の結果 starのみがstarsの変化形を有します。)

英語見出し 英語品詞 日本語見出し 日本語品詞
1 falling star 名詞 流れ星 名詞
2 Thomas A. Edison 名詞 トーマス・アルバ・エジソン 名詞
3 audio communications 名詞 オーディオ通信 名詞

3.2.3 動詞

英語見出しに動詞の見出しを登録し、日本語見出しに動詞の訳語を登録します。
日本語品詞は動詞、形容詞、形容動詞のいずれかを選択します。
英語見出しの標準形は、変化形が原形の表現です。例えば、翻訳したい英文が "He gave an impulse to it." と なっていても、 "gave"を "give" に直して、 "give an impulse to" と登録します。
日本語見出しの標準形は、活用形が終止形の表現です。終止形以外のものを登録すると、正しく活用 できない場合があります。例えば、期待する日本語の翻訳結果が "彼はそれを促進します。" となっていても "促進します" を "促進する” に直して登録します。同様に日本語品詞が形容詞の場合は「い」、形容動詞の場合は「だ」で終わるようにします。

イディオムの場合、変化の対象となる語(語形変化する語)は見出しの先頭の単語です。 (以下の例では、implement, ablate, giveが変化の対象となり、自動推定の結果、例えば過去形ならば implemented, ablated, gave のように変化します。)

「簡単登録」で動詞を登録した場合、自動詞と他動詞の両方の用法が適用されます。他動詞の場合は、目的格の 助詞の訳は「を」です。 以下(例2)の登録をした場合、 "It ablate." は「それは除去する。」、 "It ablate the power." は 「それはパワーを除去する。」と自動詞、他動詞の用法が適用されます。 自動詞、他動詞によって訳語を変更したい場合や、適用を自動詞の場合だけに限りたい場合、また助詞の訳語を 「を」以外の訳語にしたい場合はオプション登録をしてください。
オプション登録の方法は、3. で説明します。

英語見出し 英語品詞 日本語見出し 日本語品詞
1 implement structural reform 動詞 構造改革する 動詞
2 ablate 動詞 除去する 動詞
3 give an impulse to 動詞 促進する 動詞
4 carry a torch for 動詞 片思いだ 形容動詞
5 fall flat 動詞 効果がない 形容詞

3.2.4 形容詞

英語見出しに形容詞の見出しを登録し、日本語見出しに形容詞の訳語を登録します。 日本語品詞には「形容詞」、「形容動詞」、「連体詞」、「動詞」のいずれかを選択します。英語見出しの標準形は、形容詞の原級です。 日本語見出しの標準形は、活用形が終止形の表現です。なお、形容詞の場合は、特に注意が必要です。

例えば「write enable」を「書き込み許可の」と登録すると "a write enable file" は「書き込み許可のファイル」 と正しく翻訳されますが、 "The file was write enable." は「ファイルは書き込み許可の。」となり 語尾が正しく活用しません。また、「reconstructive」を「構造改革的な」と登録すると "It is reconstructive." の訳が「それは構造改革的な。」となり、語尾を正しく変化させてくれません。

前者の場合は、「名詞+だ」の形式で「書き込み許可だ」と登録し、後者の場合は終止形に直して「構造改革的だ」と 登録します。その結果、"a write enable file"⇒「書き込み許可のファイル」、"The file was write enable." ⇒ 「ファイルは書き込み許可だ。」、"It is reconstructive." ⇒「それは構造改革的だ。」、 "reconstructive plans." ⇒「構造改革的な計画。」と正しく語尾を変化させることができます。

英語見出し 英語品詞 日本語見出し 日本語品詞
1 write enable 形容詞 書き込み許可だ 形容動詞
2 reconstructive 形容詞 構造改革的だ 形容動詞
3 abhorrent 形容詞 嫌悪する 動詞
4 environmentally-friendly 形容詞 環境に優しい 形容詞
5 basal 形容詞 規定の 連体詞

ただし、日本語の辞書にないような訳語を登録した場合など、訳語によってはうまく活用してくれないものもあります。そのような場合はオプション項目で訳し分けをします。辞書登録画面で品詞を形容詞にしてオプションボタンを押すと「英語詳細品詞」の選択画面があります。ここで、「書き込み許可のファイル」のように訳出したい場合は、「名詞を前から修飾する」を選択し、訳語に「書き込み許可の」と記入し、日本語品詞は連体詞を選択します。「ファイルは書き込み許可だ。」のように訳出したい場合は、「英語詳細品詞」選択画面で「be動詞の後ろにくる」を選択し、訳語に「書き込み許可だ」と記入し、日本語品詞は形容動詞を選択します。どちらの場合にも訳せるようにするには、上記2つとも登録する必要があります。


3.2.5 副詞

英語見出しに副詞の見出しを登録し、日本語見出しに副詞の訳語を登録します。
英語見出しの標準形は、副詞の原級です。日本語品詞は「副詞」を選択してください。
日本語見出しの標準形は、日本語副詞は変化しないので訳語そのものです。

英語見出し 英語品詞 日本語見出し 日本語品詞
1 in the Middle Ages 副詞 中世に 副詞
2 as if there was no tomorrow 副詞 明日のことなどお構いなしに 副詞
3 justly 副詞 正しく 副詞

3.2.6 文

英語見出しに文の見出しを登録し、日本語見出しに文の訳語を登録します。日本語品詞は「文」を選択してください。
なお、文で登録した場合は、登録見出しと入力文が完全一致する場合のみ適用され、その構成要素で ある動詞や名詞の語形変化には対応しません。また、スペースの数やピリオドの有無も完全に一致していないと 辞書は適用されませんので、ご注意ください。

英語見出し 英語品詞 日本語見出し 日本語品詞
1 hello, there. やあ、こんにちは。
2 Thanks a lot. どうもありがとう。

3.2.7 変数を含む語

変数を含む語を 登録することができます。例えば

download [NP] at once ⇔ [NP]を一括ダウンロードする

といった登録ができ、[NP]が変数を表しています。
変数には[NP](名詞句)、[Num](数字)の2種類が記入できます。 変数が2つ以上の場合は、[1:NP]、[2:NP]のように数字+コロン(:)で見出し語と訳語の対応を指定します。

例) [1:Num] x [2:Num] resolution ⇔ [1:Num]x[2:Num]の解像度

数字は自然数でかつ各変数において重複しないようにしてください。 英語見出しに変数がある場合、日本語見出しにもその変数がないと登録エラーになります。 また、変数のみからなる見出しも登録エラーになります。 これらの変数はどんな品詞の登録にも使うことができます。

3.3 オプション登録について

3.3.1 オプション登録とは

例えば、 "old"という形容詞に対して、 "an old man."のように人間を意味する単語"man"を修飾している場合は 「歳をとっている」として翻訳し、 "an old custom"のように抽象的なものを意味する単語"custom"を修飾している場合は 「古い」として翻訳したいというように、意味によって訳語を変えたい場合があります。

また、 "Bills" という名詞に対して、複数形になれば「勘定書」と訳し、 "Bill"のように無冠詞で使用される場合は「ビル」と して翻訳したいというように、用法によって訳語を変えたい場合があります。

一方、動詞の訳語においても同様です。 "abate"という動詞に対して、目的語の名詞が抽象的なものを意味する語で あれば「弱める」と翻訳し、具体的なものを意味する語であれば、「減らす」と訳したいというように目的語や主語の名詞の 意味によって訳し分けたい場合があります。 また、後ろに目的語が来ない自動詞の場合は、「衰える」と翻訳したい、というように自動詞、他動詞の用法によって 訳し分けたい場合があります。

このように、用法やその語の意味カテゴリを設定することによって、ある見出しに対して訳し分けをしたい場合や 動詞目的語の助詞の訳語を変更したい場合、つまり「簡単登録」だけでは設定できない項目をオプション登録で設定します。 登録の仕方は簡単です。見出しと訳語を登録する各行の右端に Optionボタンがあります。このボタンを押すと 別ウィンドウが開き、各品詞のより詳細な情報を設定することができます。

現時点で、オプション設定で登録できる情報は、意味カテゴリ、用法、助詞の訳語だけですが、今後、随時追加する予定です。

以下、各品詞において、オプション設定できる項目について説明します。


3.3.2 名詞

a. 英語詳細品詞

(1)可算名詞/不可算名詞、(2)固有名詞、(3)数えられる名詞、(4)数えられない名詞、(5)複数扱いの名詞 が登録できます。
(1)可算名詞/不可算名詞
オプション設定しない場合は、自動的に この が設定されます。

(2) 固有名詞
人名や会社名などの名詞(例1)で、その語の前に aやtheの冠詞を前に置くことができず(例2)、かつ複数形に 変化することもできません(例3)。 但し、その語自身がtheやaを含むことはできます(例4)。

例1: o Bill Clinton ビル・クリントン
例2: x the Bill Clinton ビル・クリントン
例3: x Bill Clintons ビル・クリントン
例4: o the Sea of Japan 日本海

(3) 数えられる名詞
可算名詞とも呼ばれます。 具体的な事物を表す名詞で、aやtheなどの冠詞を前に置くことができ(例1)、かつ複数形に 変化することで複数形になることが可能な(例2)名詞です。
冠詞や修飾語を伴わずに、単独で存在する 場合、辞書適用の優先順位が下がります。

例1: o a cloth drier 衣類乾燥機
例2: o cloth driers 衣類乾燥機
例3: cloth drier 衣類乾燥機

(4) 数えられない名詞
不可算名詞とも呼ばれます。 抽象的な事物を表し、数えることができない名詞です。 aの冠詞を前に置くことができず(例2)、かつ複数形に 変化することもできません(例3)。
(以下(例1)のように、既に複数形になっている場合やすでに冠詞がついた見出しの登録も (4)数えられないとして登録します。)

例1: o hopes and fears 期待と不安
例2: x a hopes and fears 期待と不安
例3: x hopes and fearses 期待と不安